騎手なき馬が帰る美談
どんな伝承か
汽車が矢岳のスウィッチ・バックにかかるころ、同行の堀内から西南の役の話をしろと請われて、著者は池辺吉十郎の逸話を語った。池辺は西南の役のとき馬を借りて、川尻からそのまま返してやったところ、馬は騎る人を乗せぬまま、もとの農家へひとりで帰っていったという。その時分の美談である。塩原多助が出てきそうだねえと言って、堀内は著者にきまりのウィスキーを一杯振る舞った。なおその池辺吉十郎の息子は、著者が東京朝日新聞へ入社しようとして面接試験を受けにいった相手であり、立派な風采の人だったと続けている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
私の心霊術(長田幹彦・1955年(昭和30年))
『私の心霊術』は、長田幹彦が昭和三十年に著した心霊研究の随筆集である。死後に残る霊や地獄・極楽をめぐる考えを述べ、熊本の家系や安達謙蔵との交わり、東京放送局の文芸顧問だったころの回想、霊友会など戦後の新興宗教への批判、前著『霊界』への反響と自らの信仰を語る。「心霊科学の来世観」「霊界の構造」「ぼくの信仰」などの章からなり、末章「ある霊媒の生態」では霊媒服部との実験とそのトリックの顛末を描く。