亀太郎の霊が燈籠を運ぶ
どんな伝承か
女学校を出た和田ます子は、少年の著者を連れて茨城の郷里へ帰った。停車場から二里余りも山奥に入った、土蔵の並ぶ近村きっての旧家で、九段で事故死した弟亀太郎はこの家の一人息子だった。三周忌の晩、寺の僧を三人招いて盛大に追善を営み、土地のならわしで白い盆燈籠を仏前に飾った。夜明け近く、腹痛で眠れずにいた著者は、回り縁の奥の廊下で物を引きずるような音を聞き、続いて障子がさらさらと鳴った。翌朝、表の仏間にあった燈籠が三つも四つも著者の寝床の外の廊下に掛けてあった。僧は、久々に来た著者へ亀太郎の霊が挨拶に出たのだろうと言った。
原典より
翌朝起きてみると、どうしたのか、母家の表の間の仏間にあった燈籠がぼくの寝ているすぐ外の廊下へもってきてそっとかけてあった。—— 霊界五十年(長田幹彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。