雨を知らせる大多和ひろその灯
どんな伝承か
大多和の奥にひろそと呼ばれる場所があり、そこに灯がともると二、三日のうちに雨が降ると言い伝えられてきた。星がまたたくようなかすかな明かりだという。近隣の農家はこの灯を見ると、田の水口を開けて雨を待つ支度をした。灯の正体は、昔この場所で雪に埋もれて死んだ旅人の怨みが晴れないためで、雨や雪の降る冷たい晩に姿を見せるのだという。不思議なことに、灯がともるのはきまって秋の麦まきの時分だと語られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌(武田明・高橋克夫ほか)
『ダムに沈む ―香川県長尾町前山地区民俗誌』は、武田明・高橋克夫らが香川県長尾町の前山地区の暮らしを記した民俗誌である。祭りの項に続く「口承文芸」の項を昔話と伝説・世間話に分け、昔話は星越・大多和・譲りはの古老の語りを話者の名を添えて土地の言葉のまま書きとめる。伝説と世間話には中津・大多和・ゆずりはなどの天狗石や川女郎、首切れ馬、桂洞法印の化物寺の話を収め、項の末尾に執筆者の名を記す。