天狗隠し
どんな伝承か
昔から与野(現さいたま市中央区)の人々は、榛名山頂の榛名神社を篤く信仰し、講をつくって毎年参詣を欠かさなかった。榛名神社の額殿中央には、明治四三年四月二五日に与野講中が奉納した朱色の大きな天狗の面が掲げられている。明治四一年、講中の人々が例年のように参詣のためお山にのぼったところ、途中で一人が行方不明になった。手分けして山中を捜したが見つからず、あきらめて与野に帰ると、その男は放心したように家のあたりをうろついていた。これが天狗隠しである。彼はのぼる朝に生卵を食べ、天狗の忌諱に触れたためという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
与野市史 民俗編――伝説・昔話(与野市(編)・与野市史)
『与野市史 民俗編――伝説・昔話』は、与野市が編んだ市史の民俗編から「伝説・昔話」の章を収めたものである。武蔵国足立郡与野にまつわる伝説と昔話二十話を、疫神や弘法大師、源頼義の伝えから、お化け地蔵・一つ目大入道・天狗隠し・猫橋のいわれなどの怪異譚まで、おおむね時代順に並べる。十五話は岡安茂生編『与野の伝説』に拠り、ほかは『埼玉県伝説集成』などをもとに再調査して書き改め、話末に注を付す。