北浦和駅で倒れて会った尊い方
どんな伝承か
昭和五十四年三月五日、筆者は出勤途中の京浜東北線北浦和駅で突然脳溢血に倒れ、救急車で町外れの病院へ運ばれた。医者はひと目見るなり、もう駄目だと告げた。家族や友人が懸命に祈るなか、本人は靄の中をさまよい、自分は死んだのかと考えていた。そのとき霧に包まれて姿のはっきりしない、とてつもなく尊い方に出会った。クリスチャンの彼にはキリストにも釈迦にも見えた。育ち盛りの子が四人いると必死に延命を願うと、その方は手を振って去れという仕草をした。すると体に血が戻る感覚があり、気づけば病院のベッドの上だったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・2003年(平成15年))
『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』は、松谷みよ子が編んだ現代の民話の聞き書き集で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。一九七八年に発刊された『民話の手帖』を通じて全国から寄せられた回答を中心に、臨死体験、死の知らせ、寺へ来る死者、生まれかわりの話を収める。「あの世へ行った話」「死の話」「生まれかわり」の三章の冒頭に編者の論考を置き、細目ごとに所在地・話者・出典を添えた類話を並べる。