雉をあがめ松を嫌う聖天の氏子村
どんな伝承か
埼玉県大里郡に妻沼という村があり、聖天を祀る名高い寺があって信者も多い。その氏子の村々では雉をあがめ、松の木をひどく嫌う。理由ははっきりしないが、俗説では雉は聖天様の好む鳥だという。松については、昔聖天様が松葉で目を突いて苦しまれたからだとも、聖天様は願えばすぐ福を授けてくださるので「待つ」には及ばないからだともいう。そのため村には松が一本もなく、よそから持ち込まれるとすぐ捨ててお祓いをするという。
原典より
とにかくこの村にては松の木は一本もなく、もし他より持ち来たったならば、早速これを棄てて御祓をするという有様である。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。