大火の犯人を呪う五寸釘の人形
どんな伝承か
金木町から津軽半島の突端、北海道の見える小泊は、戦時中は海軍の物資補給港だった小さな漁村である。十一月十六日に大火があって六十五世帯が焼失し、金木署への報告では失火とされた。ところが月を越して師走に入ると、稲荷神社に集まったお婆さんたちの奇怪なマジナイが始まり、男女のワラ人形を中心に放火犯人を呪詛する呪文の声が聞こえるようになった。満願の日の八日には、体中に数本の五寸釘を打ち込まれた人形が「犯人は男か女か、早く名乗って申しひらきしないか」などと叩きつけられていた。疑われた某氏は村八分同然となり、青森法務局が人権擁護に乗り出した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。