名馬に恋われた姫と蚕の起こり
どんな伝承か
おしらの祭文である。金満長者が朝日の長者の家から二歳駒を買って育てたところ、立つに千段、座るに千段、歩むに千段という三千余段の名馬に育った。人々が見物に来るなか、長者の一人姫も十二単を重ねて馬屋の前を通り、この馬が人であれば一夜の契りも交わそうものを、畜類ではその義もならぬと心に思った。その時から名馬は餌も湯水も受けつけず病みつき、占いによって姫への恋煩いと知れる。長者は憎しと言って馬を千駄の河原へ投げ棄てた。姫は馬とともに五色の雲に乗って天竺へ昇り、翌年三月十六日、長者の坪に白い虫と黒い虫が降りた。桑の杖をついた老人の言葉で桑の葉を餌と知り、虫は繭を結んで十六善のおしらの神に現れたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第1巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第1巻』は、叢書『日本伝説大系』のうち北海道と青森県の伝説を収めた巻である。人間の始めやコロポックル、アイヌの神謡、岩木山一代記、おしら祭文、義経や弘法大師の事跡、狐や大蛇の話、地名や神社の由来などを、口承の資料を中心に採る。伝承地を記した例話を冒頭に置き、〔類話〕〔文献〕〔参考〕の欄で各地の類話の梗概と近世以後の文献の原文を添える編み方をとる。