癇の虫に効くという孫太郎虫
どんな伝承か
腹の虫、虫の居所といった言い方で呼ばれる「虫」の一つに癇の虫がある。この虫が暴れると幼児はよく泣き、夜も眠らず、偏食したり指を噛んだりするという。その特効薬として古くから知られたのが奥州斉川の孫太郎虫で、斉川は宮城県白石市にあたる。正体はヘビトンボの幼虫で、初夏になれば羽化して飛び去る奇怪な虫である。当時、斉川の近辺には本職三〇人、内職五〇人ほどの虫捕りがおり、推定十万匹が全国へ売りさばかれていた。分析では蛋白質が五割を超え、稲子ほどの栄養はあるらしい。虫切りや虫封じ、夜泣き止めの呪いは、なお各地で行われている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。