五郎沼の主が生まれ変わった娘お菊
どんな伝承か
紫波郡片寄村中曽根屋敷に十兵衛という狩の名人がいた。荒熊を手取りにし、五郎沼の大蛇を撃ち殺すほどの剛の者であった。あるとき孕んだ猿が涙を流して手を合わせて拝むのを撃ち殺して持ち帰った。やがて生まれた娘お菊は二十一になっても縁談に耳を貸さず、ある日父に、雨を降らせて行こうか風を吹かせて行こうかと言い、部屋を覗くなと言い置いた。正体は十兵衛に殺された五郎沼の主の大蛇であり、保呂羽山の大権現を避けて小梨へ移り、寛政三年十月十六日の大暴風雨で洪水を起こしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。