大蛇を一撃で倒した力士荒五郎
どんな伝承か
昔、志和村から出た力士に乱獅子荒五郎という人があった。若い頃から力量が人に勝れ、村の鎮守新山神社に棲む大蛇が野良に出て作物を荒らすのを、単身で山の宮に登り、社前の大石を頭上に差し上げて大蛇の頭に撃ちつけ、一撃で退治した。大蛇を捨てたという拝殿の前の坂路からは、今でも大きな蛇骨が出るという。荒五郎は前話の松森甚兵衛の息子で、文化の頃の人らしい。十七で郷里を出て江戸で名を成したが、奥州白河で力士秀の山の悪計にかかり、毒酒を呑んで死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
農民俚譚(佐々木喜善(著)・本山桂川(編)・佐々木喜善・東北民俗・1934年(昭和9年))
『農民俚譚』は、佐々木喜善が書きためた昔話や伝説を、その没後に本山桂川が編んで昭和九年に刊行した本である。陸中の和賀郡・岩手郡・胆沢郡で集めた炭焼長者や瘤取爺などの昔話に、河童・山男・山女・人柱・蛇にまつわる伝説、地蔵の話、異類に嫁ぐ女の話を記した「縁女綺聞」、紫波郡の口碑による「鳥蟲木石伝」などを収める。郡ごとの昔話には大正十三年の日付の前書きが付き、巻末に本山桂川の追想「佐佐木喜善君の遺業と其晩年」を置く。