天狗の神楽で瘤を取られた爺
どんな伝承か
昔、額に拳ほどの瘤のある爺が二人いた。見苦しい瘤を取ってもらおうと、山奥の神様に願を掛けて夜籠りをしていると、真夜中に笛や太鼓の囃子が近づいてきて、社の戸ががらりと開き、背丈六尺もある赤ら顔の鼻高、つまり天狗が四、五人入ってきた。囃しても舞い手がおらず退屈した天狗たちは、隠れていた爺を見つけて真ん中へ突き出した。一人の爺は囃子に乗せられて歌いながら舞い、喜んだ天狗に瘤をきれいに取ってもらった。もう一人は震えて声も出ず、とうとう尻餅をついて泣き出したため、機嫌を損ねた天狗に先の爺の瘤を鼻の上へ投げつけられ、瘤が二つの妙な顔になってしまったという。
原典より
折角の面白い神楽を泣潰してしまった、二度ともうお前のやうな爺々に逢ひ度く無い、此の瘤でも持って還れとて、先刻の爺から取った瘤を此の爺の鼻の上へ投付けた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。