飯箆を巻いて眠っていた椚林の蛇
どんな伝承か
煙山村大字赤林の内に椚林という林があった。旧藩時代にはその椚で鎗の柄を作ったといい、昔は三、四里も続く大きな林であったという。同じ村の広沢の和山に采女という人がいて、赤林に田地を持っていた。この采女の家の下女が田へ昼飯を運ぶためにこの林を通ると、一人の美しい男がいて女を引き止めた。女は今は昼飯を届ける途中だから帰りに用を聞くと言い、証拠として飯箆を渡した。帰りに林へ来ると男の姿はなく、路傍の草の中に大きな蛇が、先ほど渡した飯箆を真ん中にくるくると巻いて眠っていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。