殿様の鹿狩りと的場の姓
どんな伝承か
三田市乙原の増田では、毎年のように三田の殿様が鹿狩りに訪れ、増田の本家に宿を取ったという。隣の分家には家老が泊まり、村人は勢子として山へ駆り出され、獣を追い立てる役を務めた。殿様は俗に砥石山と呼ばれる尾根まで登って弓を引いたといい、その的場にあたる土地に住んでいた家は、その由縁から明治の初めに的場を姓としたと伝えられる。乙原の草分けを語る伝えの一節である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
兵庫県民俗調査報告8――伝説(兵庫県(編)・兵庫県民俗調査報告)
『兵庫県民俗調査報告8――伝説』は、兵庫県の民俗調査報告の一冊のうち、第10章「口頭伝承」を収めたものである。三田市の乙原・小野・尼寺・青野・末の各地区を対象に、集落の発祥や神社、廃寺、城跡にまつわる伝説、天狗に導かれたという松住大権現、狐狸の怪、狼の話などを、聞き書きと『門野氏郷土物語』などの郷土の記録から記す。伝説のあとに昔話とわらべ歌を続け、わらべ歌は地元の中学校生徒会の協力で集めた尻とり歌や羽根つき歌を載せる。