一本松で解けた野辺山のくぼ地の迷い
どんな伝承か
昭和二十年代の半ばのことである。野辺山で萱を刈り、早めに仕事を切り上げて近道で帰ろうとするうちに、あたりが薄暗くなってきた。草の茂ったくぼ地へ入り込むと、どこを歩いても出口が見つからない。方々を巡っても同じで、これは狐に化かされたのだと気づいた。腰を下ろして煙草に火をつけると、次第にあたりが明るくなり、遠くに一本松が見えた。それを目当てにしばらく歩くと細い道へ出た。家に着いたときは、まだ日は高かったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌)
『南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話』は、長野県南佐久郡の郡誌民俗編から、第十三章「伝説と歌謡」の昔話・伝説・世間話の部分を収めたものである。郡内に伝わる鳥呑み爺や古屋のもりなど十一話の昔話、離山・白駒の池・おかんばあさんなどの伝説、光り物・あずきとぎ・天狗・かっぱ・狐火・家つき童子などの世間話を集める。伝説の後半には藤沢衛彦編『日本伝説叢書・信濃の巻』から佐久に関わる話を原文のまま引き、世間話は話題ごとに体験談を並べる。