唐沢岩辺の狐火
どんな伝承か
狐火は雨模様の暗い夜に多く、一つから十、二十と増え、こちらへ向かって来るようでいて、なかなか近づかないという。語り手が六歳だった大正六年ごろ、真っ暗で生暖かい風の吹く、今にも降りそうな夜九時か十時ごろ、母に連れられて荒屋の母の実家から帰る途中、地蔵石の所で母が狐火が見えると言った。指された方を見ると、桂宵寺の南、唐沢の岩のあたりを、青や赤の火の玉がいくつも縦横に飛び交い、一つに集まって大きな光になっては、また分かれて走ることを繰り返した。怖くなって家路を急いだが、母はこんな夜には狐火がよく出ると教えてくれたという。
原典より
こういう雨の降りそうな暗い晩には狐火がよく出ると教えてくれた。—— 南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌)
『南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話』は、長野県南佐久郡の郡誌民俗編から、第十三章「伝説と歌謡」の昔話・伝説・世間話の部分を収めたものである。郡内に伝わる鳥呑み爺や古屋のもりなど十一話の昔話、離山・白駒の池・おかんばあさんなどの伝説、光り物・あずきとぎ・天狗・かっぱ・狐火・家つき童子などの世間話を集める。伝説の後半には藤沢衛彦編『日本伝説叢書・信濃の巻』から佐久に関わる話を原文のまま引き、世間話は話題ごとに体験談を並べる。