棺桶を吊り上げて恩を返すとら猫
どんな伝承か
小さな寺に貧しい坊様が住み、虎猫を一匹飼って泥鰌や魚を与えて可愛がっていた。坊様が年を取って働けなくなり、ますます貧しくなって猫に愚痴をこぼすと、猫は涙をこぼして姿を消した。幾日かして戻った猫は、自分はもう年を取って猫又になったのでこの寺にはいられないと告げ、恩返しに金持ちの婆の葬式で棺桶を吊り上げるから、その時にトラやと呼んで拝めと言い残して山へ去った。やがて金持ちの婆が死に、立派な僧たちが拝んでも黒雲が湧いて棺桶が引き上げられてしまう。貧しい年寄りの坊様が進み出てトラや、トラやと拝むと天気が戻り棺桶も下りた。坊様は川筋一の名僧と呼ばれ、一生楽に暮らしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説(南郷村(編)・南郷村史・自治体史(民俗))
福島県南郷村(奥会津)に語り継がれた方言による昔話三十一話と伝説十六話を網羅する。昔話はきのこの化け物・食わず女房・三枚のお札・笠地蔵・桃太郎・猿婿入り・ほととぎすの姉妹・人喰い鎮守・天女の羽衣・羅生門の鬼など、語り手(和泉田の五十嵐ヤスら各集落の伝承者)を明記して収める。