棺桶を吊り上げて恩を返すとら猫
どんな伝承か
小さな寺に貧しい坊様が住み、虎猫を一匹飼って泥鰌や魚を与えて可愛がっていた。坊様が年を取って働けなくなり、ますます貧しくなって猫に愚痴をこぼすと、猫は涙をこぼして姿を消した。幾日かして戻った猫は、自分はもう年を取って猫又になったのでこの寺にはいられないと告げ、恩返しに金持ちの婆の葬式で棺桶を吊り上げるから、その時にトラやと呼んで拝めと言い残して山へ去った。やがて金持ちの婆が死に、立派な僧たちが拝んでも黒雲が湧いて棺桶が引き上げられてしまう。貧しい年寄りの坊様が進み出てトラや、トラやと拝むと天気が戻り棺桶も下りた。坊様は川筋一の名僧と呼ばれ、一生楽に暮らしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説(南郷村(編)・南郷村史)
『南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説』は、南郷村の村史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。奥会津に語られる昔話を方言のまま書きとめ、きのこの化け物、食わず女房、三枚のお札、天女の羽衣などを語り手の地区と名を添えて載せ、伝説では高倉宮以仁王、蛍堂、箱渕のきつね、萩山稲荷の萩太郎、天狗の飛礫などを伝える。昔話と第二節「伝説」に分かれ、末尾に参考資料の一覧を付す。