娘を食う鎮守の正体は大ダコ
どんな伝承か
浜端に建つ鎮守は人を食う鎮守で、年に一度、村一番の美しい娘を差し出さないと荒れて村中を滅茶苦茶にした。今年も村人が泣く泣く用意していると、通りかかった旅人が訳を聞き、退治してやろうと申し出た。厚い板で穴を五つ開けた箱を作らせ、醤油と酢を五合ずつ、酒を一升、丼と出刃包丁を持って箱に入り、大木に縛りつけてもらって待った。夜更けに海からざぶざぶと音がして近づき、箱の穴へ指のようなものが突き込まれる。旅人は出刃で切っては酢に漬けを繰り返した。やがて手も足も失った蛸が死んでいた。人喰い鎮守の正体は大蛸で、村は平和になり、旅人は村の婿となって幸せに暮らしたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説(南郷村(編)・南郷村史)
『南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説』は、南郷村の村史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。奥会津に語られる昔話を方言のまま書きとめ、きのこの化け物、食わず女房、三枚のお札、天女の羽衣などを語り手の地区と名を添えて載せ、伝説では高倉宮以仁王、蛍堂、箱渕のきつね、萩山稲荷の萩太郎、天狗の飛礫などを伝える。昔話と第二節「伝説」に分かれ、末尾に参考資料の一覧を付す。