山崩れを予知して去った清浄池の主
どんな伝承か
むかし鴇巣集落の大半は沼地で、沼の主が住んでいたという。集落の西南にそびえ立つ舟久保山があり、その麓の古寺に住職が一人住んでいた。ある年、降り続く雨で山の地盤が緩み、幾日も不気味な山鳴りが村中に響いた。ある夜、稲妻が光り雨が激しく降るなか、村人が恐る恐る戸を開けると、白髪の老人が牛に乗って東北の彼方へ走り去る姿が見えたという。沼の主は山崩れを予知して去ったのである。二、三日後、大音響とともに舟久保山が崩れ落ち、青々とした大沼はほんの一部を残して埋め尽くされ、古寺も住職も御尊体もろとも押しつぶされた。残った池は澄み渡り清水が湧き、清浄の池と名づけられ、その水は目の病に効くと伝えられた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説(南郷村(編)・南郷村史)
『南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説』は、南郷村の村史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。奥会津に語られる昔話を方言のまま書きとめ、きのこの化け物、食わず女房、三枚のお札、天女の羽衣などを語り手の地区と名を添えて載せ、伝説では高倉宮以仁王、蛍堂、箱渕のきつね、萩山稲荷の萩太郎、天狗の飛礫などを伝える。昔話と第二節「伝説」に分かれ、末尾に参考資料の一覧を付す。