四か村の草を食い尽くした大牛
どんな伝承か
昔、和泉田村に大きな牛がいた。富沢山の草を食べ尽くし、下山村まで首を伸ばして山の草を食べ、さらに片貝村、界村まで首を伸ばして茅場の草まできれいに平らげてしまった。怒った界村の申し入れで和泉田村は牛を殺すことにしたが、鉄砲で撃っても死なず、四か村の人々が首に縄をかけてようやく引き倒した。皮は大きすぎて張る場所がなく、伊南川に杭を打って張ったため、川には和泉田と下山を結ぶ木の橋一本しか架からなかった。肉は食べきれないほどで村は富み、のちに富田村と呼ばれたという。肉を分けなかったことから、伊南川を挟む東西の争いが絶えないとも伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説(南郷村(編)・南郷村史・自治体史(民俗))
福島県南郷村(奥会津)に語り継がれた方言による昔話三十一話と伝説十六話を網羅する。昔話はきのこの化け物・食わず女房・三枚のお札・笠地蔵・桃太郎・猿婿入り・ほととぎすの姉妹・人喰い鎮守・天女の羽衣・羅生門の鬼など、語り手(和泉田の五十嵐ヤスら各集落の伝承者)を明記して収める。