箱渕の狐火と斬られた娘
どんな伝承か
鴇巣から小野島へ抜ける道は細い山道で、ちょうど境のあたりに箱渕という沼があった。昼でも薄暗く気味の悪い場所で、夜に通る者はほとんどいない。そのうえ毎夜狐火が見えるという噂が流れ、いよいよ人足が絶えた。鴇巣の与八という学のある度胸のよい男が狐退治を思い立ち、刀を差して草むらに潜んだ。夜更け、提灯を提げてほおかぶりをした女が近づいたので、狐は化けた姿の後ろにいると聞いていた与八は背後から斬りつけた。倒れたのは狐ではなく村の娘ハナヨで、狐火は小野島の定吉のもとへ通う提灯の火だった。与八は娘を助け、狐につままれた話として語り継いだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説(南郷村(編)・南郷村史・自治体史(民俗))
福島県南郷村(奥会津)に語り継がれた方言による昔話三十一話と伝説十六話を網羅する。昔話はきのこの化け物・食わず女房・三枚のお札・笠地蔵・桃太郎・猿婿入り・ほととぎすの姉妹・人喰い鎮守・天女の羽衣・羅生門の鬼など、語り手(和泉田の五十嵐ヤスら各集落の伝承者)を明記して収める。