箱渕の狐火と斬られた娘
どんな伝承か
鴇巣から小野島へ抜ける道は細い山道で、ちょうど境のあたりに箱渕という沼があった。昼でも薄暗く気味の悪い場所で、夜に通る者はほとんどいない。そのうえ毎夜狐火が見えるという噂が流れ、いよいよ人足が絶えた。鴇巣の与八という学のある度胸のよい男が狐退治を思い立ち、刀を差して草むらに潜んだ。夜更け、提灯を提げてほおかぶりをした女が近づいたので、狐は化けた姿の後ろにいると聞いていた与八は背後から斬りつけた。倒れたのは狐ではなく村の娘ハナヨで、狐火は小野島の定吉のもとへ通う提灯の火だった。与八は娘を助け、狐につままれた話として語り継いだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説(南郷村(編)・南郷村史)
『南郷村史 第5巻(民俗編)――昔話と伝説』は、南郷村の村史民俗編のうち、第十一章「昔話と伝説」を収めたものである。奥会津に語られる昔話を方言のまま書きとめ、きのこの化け物、食わず女房、三枚のお札、天女の羽衣などを語り手の地区と名を添えて載せ、伝説では高倉宮以仁王、蛍堂、箱渕のきつね、萩山稲荷の萩太郎、天狗の飛礫などを伝える。昔話と第二節「伝説」に分かれ、末尾に参考資料の一覧を付す。