阿弥陀様を川へ流した話
どんな伝承か
もとは小明見にあった阿弥陀像が、いつの間にか倉見のほうへ移ってしまい、どちらの持ち物かで小明見と倉見が争った。役人が、像を川へ投げ込み、上へ流れれば小明見、下へ流れれば倉見のものとせよと言ったので、試しに投げ入れると像は流れに逆らって上っていき、小明見のものと決まったという。この阿弥陀は霊験あらたかで、前を通るときは馬から降りるほどだった。ところが修理に出したところ、像の体内から富士山林にあると記した巻物が出てきて、修理した者がその謎を解き、すねのあたりに納められていた何かを抜き取ってしまった。それきり阿弥陀は神通力をなくしたという。
原典より
小明見にあった阿弥陀様がいつの間にか、倉見の方へ行ってしまい、小明見と倉見でその阿弥陀様がどっちの物か論争していたら、お役人様が、阿弥陀様を川へ投げてみろと。—— 向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異(民俗調査報告 第9号・第10号・民俗調査報告) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異(民俗調査報告 第9号・第10号・民俗調査報告)
『向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異』は、民俗調査報告の第九号・第十号にあたる向原の民俗誌の上巻から、「IX 口承文芸」の章を収めたものである。昭和五十六年から五十七年にかけて向原の話者から聞き書きした昔話十一話、伝説二十四話、天狗や狐、河童、ヒトダマをめぐる世間話二十七話のほか、富士山や天気の諺と暮らしの方言を収める。昔話・伝説・世間話の節ごとに題名・分類・話者の生年・採集日の表を置き、話は土地の言葉のまま書き起こして話者名を添える。