山の神の天罰
どんな伝承か
たいそう猟が好きで上手な人がいた。大物が好きで、鳥はあまり撃たず猪や鹿を狙った。猪を獲るにはどうしても富士の裾野へ行き、雪の中に小屋をつくって一月も頑張らねば取れない。そうして猪を取りに行ったところ、大きなやつにぶつかったが撃ち損ない、急所を外したので猪が向かってきた。鉄砲で受け止めて押さえたものの力負けしそうになり、その時「これで猪はおしまいにするから、ぜひ猪に勝たせてくれ」と山の神に祈った。おかげでとうとう勝った。ところがよい雪が降ると山の神との約束は棚上げになって出かけてしまい、帰らないので探しに行くと、雪の中で立ち往生していた。それきりであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異(民俗調査報告 第9号・第10号・民俗調査報告)
『向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異』は、民俗調査報告の第九号・第十号にあたる向原の民俗誌の上巻から、「IX 口承文芸」の章を収めたものである。昭和五十六年から五十七年にかけて向原の話者から聞き書きした昔話十一話、伝説二十四話、天狗や狐、河童、ヒトダマをめぐる世間話二十七話のほか、富士山にまつわる諺と方言を収める。各節の初めに題名・分類・話者の生年・採集日を記した分類表を置き、話は土地の言葉のまま書き起こして話者名を添える。