滝壺で髪を梳く六尺の裸女
どんな伝承か
弘前の平尾魯仙が著した『谷の響』一之巻の「山婦」による話である。井筒村の農夫三人が連れ立って羽州田代岳の神に参詣し、その帰りに路を外して険しい渓谷へ出た。谷を伝って下れば麓に出られると三町ばかり進むと、百尺の懸崖が滝となって道を絶っていた。三人が岩の突端に腹這いになって谷底をのぞくと、六尺ばかりの女が真っ裸で滝壺のかたわらに坐り、長い髪を水に浸して梳いていた。驚いて立ち去ろうとするうち、水が大雨を逆さに懸けたように弾け上がり、雲霧が谷に起こって風雨が山中に鳴りわたり、胡桃ほどの霰が木の葉を地に払った。三人はやっと六、七町を走り下った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・昭和中期(1977年頃))
ザシキワラシ(座敷童子)と福の神(怪談の世界)/遠野・東北の怪異伝承/家運の盛衰と怪音/妖怪と幽霊譚/山田野理夫の怪談採集