渦の底に沈む鐘ヶ淵の巨鐘
どんな伝承か
隅田川と荒川と綾瀬川が交わるあたりを鐘ヶ淵という。千住から橋場を経て浅草へ向かう道のちょうど中ほどで、かつては渡し場のあった場所である。ここは絶えず渦が巻き、その底に巨大な鐘が沈んでいると伝えられた。水はことのほか冷たく、晴れた日に覗くと鐘の頭が見えたともいう。享保の末に引き揚げようとした一件があり、数百人が取りかかったが、鐘から不気味な光が放たれ、掛けた綱はことごとく切れてしまった。川向こうの三つの寺が、それぞれ自分の寺の鐘だという縁起を伝えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
妖怪の民俗学――日本の見えない空間(宮田登・宮田登・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・宮田登が、妖怪を『日本の見えない空間』の問題として論じた現代民俗学の名著。Ⅰ妖怪のとらえ方では、柳田国男『妖怪談義』の妖怪論(妖怪は出る場所が決まり、零落した神)と、幽霊(都市の人間関係から相手を追って出る)との区別、昭和五十四年に流行した口裂け女(受験社会で母に叱られる子供の心意の投影、『喰わず女房』の鬼女の再来)と産女、島根県松江の雲州皿屋敷のお菊、明治の井上円了の妖怪学と真怪・仮怪の分類を扱う。