金華山の渡船で酔わぬ梅干の呪い
どんな伝承か
陸前の金華山は多くの人が詣る名所であるが、その渡船は酔うので有名であった。その呪いとして、臍の窪みに梅干を一つ入れて盃を伏せ、その上から腹帯をしっかりと締めるというものがあった。著者はこれを、腸の蠕動と胃の動きを抑え、横隔膜の挙上運動を止めるものであろうと解し、自身も横隔膜を下げ腹壁を堅くするよう努めることが有効であるのを実証していると記す。船酔いには脳貧血、嘔吐、消化液の分泌異状などがあり、酔わぬという自信や意志があれば相当の程度まで抑えられるので、何かの呪いを純真に信じていれば酔わずにすむ。梅干を入れることは精神にも働くのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・1948年(昭和23年))
『科学的教養』は、小泉丹が昭和二十三年に春秋社から刊行した、科学的なものの見方を説く評論である。精確さ・合理性・実証の面から科学的と非科学的の違いを論じ、河童の記録や呪いの効き目、『耳袋』の怪異談、狐憑き、幽霊・化物屋敷、人魂・鬼火・怪火を例に、日本人のものの考え方を検討する。昭和十七年に書いた前版を戦後に改稿したもので、序と起序に続く七章から成り、旧稿の終わりの二章を除いたと序に記す。