金華山の渡船で酔わぬ梅干の呪い
どんな伝承か
陸前の金華山は多くの人が詣る名所であるが、その渡船は酔うので有名であった。その呪いとして、臍の窪みに梅干を一つ入れて盃を伏せ、その上から腹帯をしっかりと締めるというものがあった。著者はこれを、腸の蠕動と胃の動きを抑え、横隔膜の挙上運動を止めるものであろうと解し、自身も横隔膜を下げ腹壁を堅くするよう努めることが有効であるのを実証していると記す。船酔いには脳貧血、嘔吐、消化液の分泌異状などがあり、酔わぬという自信や意志があれば相当の程度まで抑えられるので、何かの呪いを純真に信じていれば酔わずにすむ。梅干を入れることは精神にも働くのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・昭和(戦中))
生物学者・小泉丹『科学的教養』(戦中刊)。国民の科学性とは科学知識の普及ではなく科学的態度であるとし、科学的・非科学的の境界を吟味したうえで、怪異談を科学的に検討する。