抱かされた子に脇差しと櫛
どんな伝承か
雪の精としての雪女は、透き通るような白い着物をまとった美女が大雪や吹雪の夜道に現れ、どこからさらってきたか知れぬ子供を抱いて、この子を抱いてくださいと細い声で通りがかりの人に頼むという。佐藤紅緑の『樹々の春』に出てくる青森県浪岡村の雪女も、子供を抱いてくれと頼み、抱いてやるとその女は消えてしまって、子供はいつまでも泣きやまない。そのとき、男の子ならば脇差しを差してやり、女の子ならば櫛を持たせてやると泣きやむといっている。声に誘われて子を抱くと雪を抱えたような冷気が襲い、やがて雪の中で凍え死ぬとも語られた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・1986年(昭和61年))
『暮しの中の妖怪たち』は、岩井宏實が昭和六十一年に著した妖怪の概説書である。鬼・天狗・河童から山姥、産女、雪女、怪火、ザシキワラシ、化け猫、狐狸、幽霊まで、各地の伝承や古典・絵画に見える妖怪を一つずつ取り上げ、その姿と仕業を説く。第I章で個々の妖怪を紹介し、第II章で妖怪の性格、出現の空間と時、正体を論じ、巻末に著者が資料とした妖怪の本の一覧とあとがきを置く。