火葬の前夜に現れた盲目の少女
どんな伝承か
青森市営火葬場に勤めていたM君の体験である。数年前の四月、八甲田山にほど近い雲谷峠の沢で、残雪を枕にした少女の変死体が見つかった。腐乱して人相も着衣も分からず、県下一円に手配したが身元は判明せず、規定の一か月が過ぎようとしていた。火葬の前夜、M君が掃除をしていると飼犬が激しく吠え、安置所の前に目を閉じた少女が微笑んで立っていた。おさげ髪に紺絣とモンペ、杖をついて前かがみである。犬が走り寄ると少女は安置所へ吸い込まれるように消えた。警察が捜索人台帳を洗うと、北津軽郡金木町出身で盲ろう学校へ通う少女が浮かび、両親が写真を持って駆けつけて身元が確かめられた。
原典より
青森市民であれば、彼を知っている方も大勢いると思います。—— お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
お化けと幽霊(大高興・1978年(昭和53年))
『お化けと幽霊』は、大高興が昭和五十三年に青森市の北の街社から出した、お化けと幽霊と心霊現象の解説書である。仮死からの蘇生の話や霊魂論に始まり、青森県内で撮られた心霊写真の実例、こっくりさんなどの霊界通信法、天狗・寝太り・鎌鼬などに出会った話、幽霊の存在説と否定説・分類・人相学、人魂までを扱う。問答の形でお化けを語る節や観察と記録の手引きを交え、巻末に五十音順の心霊用語集を付す。