薬師が炎から逃れて隠れた隠し山
どんな伝承か
隠し山は慈林の堂下にあるが、山ではなく五、六十坪ほどの草深い湿地である。慈林の薬師堂は何度か火事に遭っており、そのとき薬師さまが炎の中を逃れて隠れた場所だという。薬師さま自らそこまで飛んで難を逃れたので、飛び島とも呼ぶ。土地の人は長くここを神聖な場所とし、入ると目がつぶれるといって耕地整理のときも手を付けなかった。誤って踏み込めば薬師さまの怒りに触れて隠され、二度と戻れないと子供たちは言い聞かされた。一方で、寺の宝を埋めた場所なので隠し山といい、目がつぶれるなどの戒めは宝を守るために言い出されたとも伝える。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
川口市史 民俗編――伝説(川口市(編)・川口市史)
『川口市史 民俗編――伝説』は、川口市が編んだ市史民俗編のうち、第四章「伝説」を収めたものである。六兵塚や首塚などの塚、山・池沼・樹木にまつわる話、八百比丘尼の椿、神社・地蔵・観音・薬師の霊験、地名の由来、正月の餅を搗かない家例や蛇まつり、川口の鋳物の始まりなどを、地内の地名や家名とともに記す。自然伝説、信仰伝説、歴史伝説の三節に分け、節の中を塚・山・池沼などの項に立てる。