昔話・朱膳朱椀(旅学問)
どんな伝承か
世間体を覚えさせようと、おじいさんが息子を旅に出した。息子は帳面を持ち、見たものの名を人に聞いては書きつけたが、小豆を「ようかん」、犬の皮を「けんび」、馬の皮を「ばひ」、死んだ牛を「ねうし」、朱ぬりの椀を「朱膳朱椀」、大きな石を「エート」と覚えこんでしまった。やがてある所で馬に乗ると、小豆畑から犬が飛び出して馬が驚き、落ちて石に頭をぶつけ血を流した。息子はそれを「ようかん畑からけんびが飛び出て、ばひがおどろき、頭をエートにくらし、朱膳朱椀のごとくに相成候」と書き送ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
新野民俗誌稿――長野県下伊那郡阿南町(口頭伝承)(湯田朝子(第十五章「口頭伝承」))
『新野民俗誌稿――長野県下伊那郡阿南町(口頭伝承)』は、阿南町新野の民俗誌稿のうち、湯田朝子がまとめた第十五章「口頭伝承」の報告である。昭和五十三年一月に新野の古老五人から採話した昔話・伝説・ことわざ・なぞを収め、昔話には日本昔話名彙・日本昔話集成の話型を注し、伝説は信仰的・歴史的・文芸的の三つに分けて話者の名と生年を添える。昔話の語り始めと語り納めの形式や語りの場の変化も記し、ことわざとなぞで結ぶ。