御浅明神の使いの人魚を打った乙見村の祟り
どんな伝承か
若狭国大飯郡の御浅嶽は魔所とされ、山の八分目より上には人が登らない。御浅明神の使いは人魚だと言い伝えられていた。寛永年中、乙見村の漁師が漁に出ると、岩の上に横たわるものがいた。頭は人間で、襟には鶏のとさかのような赤いひらひらしたものを巻き、そこから下は魚だった。漁師が何気なく櫂で打つとすぐ死んだので、海へ投げ込んで帰った。するとその時から大風が起こって海鳴りが七日間やまず、三十日ほどして大地震があり、御浅嶽の麓から海辺まで地が裂けて乙見村はまるごと陥ちてしまった。明神の祟りだという。諸国里人談の話。
原典より
海へ投入て歸りけるにそれより大風起つて海鳴る事一七日止ず。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。