子狐の死を恨み娘三人を取り殺した親狐
どんな伝承か
東遊記に、天明の巳年に越後村上の近在で起きたという話が載る。百姓夫婦が娘三人と暮らしていたが、鼠が荒れるのでマチンを混ぜた飯で二、三匹退治し、庭先に捨てた。その夜、近所の狐の子がその鼠を食べて毒にあたり死んだ。親狐は主人を恨んで姉娘に取り憑き、恨み言を口走らせて数日で死なせ、次々に憑いてひと月ほどで三人の娘を取り殺した。嘆いた父母が庭先で、子狐が勝手に食べたのはそちらの落ち度なのに、罪のない娘を三人も殺すとは何事かと責めると、その晩、庭先に老狐が二匹死んでいた。夫婦は無常を感じて剃髪し、田畑を売って西国巡礼に出たという。
原典より
又其次の娘にこり付て只一月ばかりの間に三人の娘死しぬれば、父母甚歎き悲しみ、…—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。