子狐の死を恨み三人娘に憑いた親狐
どんな伝承か
著者が『東遊記』から引く、狐の誤解が招いた悲話。越後村上の近くの村に、娘を三人持つ百姓夫婦がいた。天明五年のこと、家の中で鼠が暴れて物を荒らすので、毒を混ぜた飯を与え、死んだ鼠を庭先に捨てておいた。その夜、近所の子狐がその鼠を食べて毒に当たり死んでしまう。親狐は家の主を深く恨み、長女に憑いて恨み言を口走らせ、数日で死なせた。続いて次女、三女にも憑き、ひと月ほどで三人とも死んだ。嘆いた父母が、子狐の死は自分の過ちではないと庭先で訴えると、翌晩庭に老いた狐が二匹死んでいた。夫婦は無常を感じて髪を下ろし、田畑を売って四国・西国の巡礼に出たという。
原典より
畜生とは云いながら余りなることかなと、恨みかこちけるに、かの親狐この道理につまりしにや、翌晩庭先に老狐二匹死し居たり。—— 怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪談の世界(山田野理夫・1978年(昭和53年))
『怪談の世界』は、山田野理夫が昭和五十三年に著した怪談の研究随筆である。遠野での佐々木喜善と柳田国男の出会いから説き起こし、家・山・木・石・道・水・火に現れる妖怪、憑き物、鬼と天狗、生霊・死霊・幽霊の話を、著者の聞き書きや各地の民俗資料、古典・芝居から集め、沖縄の話で結ぶ。章立ては江馬務と柳田国男の妖怪分類を参考にしたもので、民俗学の資料と文学作品の両面から怪談をとらえようとしている。