松の樹に下がる空の菰俵
どんな伝承か
慈恩寺部落では、甕へ空けて空になった菰は、寺の境内に置いてゆかれても困るので持ち帰ってもらうが、それをよく墓地へ持っていって樹に吊るしておく家があると、四十八坊の中心として今も栄える真言宗の寺で聞かされた。実際に山上の共同墓地へ登ってみると、新仏を葬った側の松の樹に、空の菰俵が両端を縛った縄で吊り下げられている無気味な風景を捉えることができた。墓地は八、九十年来、山上に共同のものができたが、もとは各家が別々に墓地を持っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。