豆酸の覚書に見る父の宗旨母の宗旨
どんな伝承か
対馬の豆酸郷にも、一九世紀の初めには生家継承型の男女別半檀家があった。中村正夫が紹介した文政九年の宗門改覚書がそれを明かしている。覚書は、人は生まれつきの宗旨に従うものとし、男は父の宗旨、女は母の宗旨を用いると定め、それゆえ嫁入りする者も聟入りする者も、自分の宗旨を持って相手の家へ移るのだと記す。嫁いできた女が生家の寺に属し、その娘も母方の寺に入るこの型は、熊本の腹赤村の宗門改帳に見えるものと同じで、著者は、家ごとに男女の寺が固定した型の多くは、ここから移り変わったものだろうと考えている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。