対馬の枕石と同族の先祖碑
どんな伝承か
死者はやがて祖先と一つに融け合い、子孫から祀られるようになる。その古い形を思わせる習俗が、対馬のある村に伝わっている。ここでは亡くなった人に川原の石を枕としてあてがい、その枕石に戒名を書く。戒名を書くのは禅宗の旦那寺のやり方によるものである。葬送が終わると、寺の境内に同族ごとに立つ石碑のかたわらへ枕石を納める。石碑は田口家の先祖さん、松島家の先祖さんというように、一族の名を冠して呼ばれた。例は少ないが、古い祭りの形を復元するうえで見逃せない習俗とされる。
原典より
葬送がすむと寺の境内にある各同族別の石碑の傍に枕石を納める慣行がある。—— 日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗(原田敏明・池上廣正・堀一郎ほか)
『日本民俗学大系 第8巻――信仰と民俗』は、原田敏明・池上廣正・堀一郎ら十二人の執筆者による論文集である。民間に伝わる神と霊の観念、家や村の氏神、職業の神、祭りの日取りと組織、憑きものや妖怪を題材に、各地の調査報告や古記録に見える事例を引いて論じる。原田の総説に始まる十七編からなり、後半では修験道・庚申信仰・キリシタン・新興宗教と民間信仰とのかかわりを扱う。