雨落ちの石を枕にした死人
どんな伝承か
山口の田尻長三郎は土淵村一番の物持ちである。当主の老人の話に、この人が四十あまりの頃、おひで老人の息子が亡くなった葬式の夜、人々が念仏を終えて帰った後、話好きの自分だけが遅れて出たところ、軒の雨落ちの石を枕にして仰向けに寝ている男がいた。見知らぬ人で死んでいるようである。膝を立て口を開いていた。足で揺すっても身じろぎもしないので、ついに跨いで家に帰った。翌朝行くと跡形もなく、石の形と在り処だけが見覚えのとおりであった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。