嫁入り箱がやがて棺になる唐櫃
どんな伝承か
南会津の檜枝岐では、男女とも十五歳になると親が唐櫃をつくって与えた。以後、本人の衣類などをそれに納めておき、女子は婚姻のときこれを婚家へ持ってゆく。そして本人が死ぬと、それがそのまま棺になる。早川孝太郎の『檜枝岐探訪記』によれば、材は黒檜で、内法で高さ一尺二寸、長さ二尺八寸、幅一尺四寸、蓋は掛蓋で、男子用は上面が平ら、女子用は蒲鉾形だという。著者はこの寸法でどうして成人の遺骸を収められるのかを疑い、村の大工に尋ねた。大工は、身体の大きい人には大きく作るが、標準はその寸法でたいてい間に合うと答えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊魂の行方(最上孝敬・最上孝敬・葬送民俗・1984年(昭和59年))
『霊魂の行方』は、最上孝敬の葬送習俗に関する論説を集め、名著出版が昭和五十九年に刊行した論集である。死者の霊を家から送り出す霊送りやカラダビ、骨掛け、男女別墓制と半檀家、無縁仏、盆と施餓鬼、葬儀の水など、千葉・埼玉をはじめ各地で聞き取った習俗と既刊の報告をもとに論じる。「霊送りとその周辺」「葬送の諸問題」「葬祭の民俗」の三章に二十八篇を収め、巻末に初出一覧、大島建彦の解説、年譜、著作目録を付す。