お力さん
どんな伝承か
吉見町流川の関根家に、当主から十五代ほど前、しこ名を山獅子といい日の下開山にまでなった戸兵衛という力持ちがいた。その妹のお力さんも子供のころから兄に劣らぬ体と力の持ち主で、気立てがやさしく誰からも可愛がられ、縁あって宮鼻の某家に嫁いだ。秋の収穫時には米俵を両手に一俵ずつさげて運ぶほどだった。ある晩秋の朝、近所の若者が陰口を叩いているのを聞いたお力さんは、無言で台所に入り、若者の肩を膝で押さえたうえ、大黒柱を抱え上げて髷の上に降ろした。男が五、六人がかりでも動かず、詫びを入れて許された。以後、陰口は絶えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説(東松山市(編)・東松山市史)
『東松山市史 資料編 第5巻(民俗編)――伝説』は、東松山市が編んだ市史の民俗編のうち、伝説の部分を収めたものである。岩殿山の悪龍退治や比企一族の落人の話、永福寺の河童の詫証文、箭弓神社の銭絵馬、狐に化かされた話、神かくし、雪女郎など、市内の寺社・坂・沼・塚にまつわる四十六話を載せる。各話は会話を交えた語り口に書き直され、多くの話の末尾に〔 〕で由緒や文献上の注を添える。