須釜淵の隠れ蓑と膳椀貸し
どんな伝承か
元禄一三年(一七〇〇)の記録が残る話。日下田家の雇人が須釜淵の近くで馬を洗って戻ると、馬の尾に亀に似た見慣れない生き物が取りついており、棒でたたいても離れなかったが、駆けつけた主人が手を出すと、ころりとその掌に転がり込んだ。主人は竜神の使いかもしれないと言って、竜宮の入口といわれる淵にこれを放してやった。幾日か後、主人の夢に天女が現れ、淵のたもとの一番大きな松の下に授け物があること、振る舞いのときは手紙を淵に投げ込めば膳椀を貸すことを告げた。隠れ蓑や隠れ笠などの授け物は先に下女が見つけて大半を隠して逃げ、残った蓑の片袖と小袋は家宝となったが、明治四四年の火事で蓑は焼け、小袋だけが残った。膳椀も、下女が壊した膳を黙って返してからは借りられなくなったという。そのころ里人が須釜淵のカッパを捕らえて殺そうとしたときも、主人が助けて淵へ逃がすと、それからいたずらをしなくなったという。
原典より
さて、主人が夢を見たあと、ふるまいごとがあったときに、膳や椀など必要な数を紙に書いて須釜淵に投げ入れたところ、いつの間にか、それらのものが準備されていたそうな。—— 真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話(真岡市(編)・真岡市史)
『真岡市史 第5巻(民俗編)――伝説・昔話』は、栃木県真岡市の市史民俗編から、第十四章「口頭伝承」の第一節「伝説・昔話」を収めたものである。大だら法師の足跡、釜淵の燈籠、大前堰の人柱、へび娘など、五行川・鬼怒川・小貝川の淵や沼、社寺にまつわる伝説と、タヌキやキツネに化かされた話を、既刊の民話集・伝説集と新たな採話から集める。冒頭に口頭伝承の参考文献を掲げ、各話の末尾に典拠を記し、結びの「まとめ」で話を河川・社寺・沼・動物の別に整理する。