深江部落の犬神大騒動と犬神使いの婆
どんな伝承か
速見郡日出町の深江部落では、三十年ほど前、四十戸のうち三十五、六戸に犬神が憑いたという大騒ぎが起きた。いまでも犬神が憑いたといって一晩じゅう犬の真似をして吠え続ける者が出ると、部落の人々は眠らずにその家を取り囲むことが珍しくないという。この辺りでは持ち筋を「犬神使い」と呼ぶことが多く、同じ町の豊岡にいた犬神使いの老婆は、橋の下にすむ犬神を拾ってきて床下で飼っていたと伝わる。付近には犬神藪・犬神川原・犬神小路と呼ばれる所が多く、犬神は女から女へ伝わり、婿には付いていかないとされる。
原典より
速見郡日出町では約三十年前に深江部落四○戸のうち三五、六戸に憑いたという大騒動が起こったが、…—— 日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。