脇の下に潜むヤコオと疱瘡除け
どんな伝承か
壱岐で語られるヤコオは、鼬に似た姿をした憑きものだという。人の脇の下にもぐりこまれた者がヤコオ憑きになり、この獣は塩辛を嫌うので、憑かれた人も塩辛を口にしなくなると言い伝える。鼠よりやや大きく黒い色をしているとする話もある。火傷の痕や疱瘡をなめられた者は命を落とすとされ、疱瘡を病む家では患者を蚊帳に入れ、まわりに麻殻の灰をまき、刀剣を置いてヤコが近寄らぬようにした。人々が車座になって黙りこんでいる光景は、疱瘡の看病の場に見えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の憑きもの――俗信は今も生きている(石塚尊俊・1959年(昭和34年))
『日本の憑きもの――俗信は今も生きている』は、石塚尊俊が昭和三十四年に著した研究書である。狐・犬神・蛇などの動物霊が人に憑くという俗信と、それを操るとされる家筋について、全国の伝承と近世以来の文書を集めて論じる。出雲・隠岐・豊後・土佐では筋の家の割合や縁組の偏りを調べ、憑きもの落としの行法や家の神とのつながりまでを七章で追っている。