袖を引いた疱瘡死の五歳の子
どんな伝承か
栗原某という者が小日向に住み、近隣の旗本屋敷へ常に出入りして、奥まで通るほど懇意にしていた。その家には五歳になる一人の子息があり、至って愛らしい生まれつきで、栗原はたいそう可愛がって通うたびに土産を携えて行った。しばらく訪ねずにいたところ、屋敷から今晩は是非来るようにと申し越してきた。玄関から上がって勝手の方の廊下へ行くと、例のようにその小児が出て来て栗原の袖を引き、勝手の方へ導いた。勝手には何かしめやかに屏風などが立ててあり、病人でもあるのかと何気なく通ると、主人が出て来て、かねて不憫がっていた五歳の倅は疱瘡で相果てたと語った。栗原は驚いたばかりか身の毛がよだったと、直々に語ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
科学的教養(小泉丹・小泉丹・科学論・昭和(戦中))
生物学者・小泉丹『科学的教養』(戦中刊)。国民の科学性とは科学知識の普及ではなく科学的態度であるとし、科学的・非科学的の境界を吟味したうえで、怪異談を科学的に検討する。