磐梯山に湧いた弘法清水と大入道
どんな伝承か
昔、会津平は冷たい風が吹き荒れて稲が実らず、村人たちは一戸一人ずつ出て磐梯山の山頂へ祈りに登ることにした。道中で加わったみすぼらしい坊様が、渇きに苦しむ一行のために錫杖で地を突くと水が湧き出た。さらに山中に現れた大入道は、自分の化身の大蛇が飯豊山を枕に寝ているのだと言う。坊様は力くらべに事寄せて入道を小さくさせ、洞へ封じて磐梯大明神として祀った。会津平の霧は晴れ、米のよく実る土地になった。坊様は弘法大師で、湧いた水を弘法清水と呼ぶという。
原典より
その頃、会津平らは辺り一面、みんな冷てぇ風が吹いて、お天道さまの顔も拝まんにぇで、秋んなっても稲は稔んねべし、会津平らの百姓たちは、ほとほと困っちまってたんだど。—— 磐梯町史 民俗編――伝説と昔話(磐梯町(編)・磐梯町史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
磐梯町史 民俗編――伝説と昔話(磐梯町(編)・磐梯町史)
『磐梯町史 民俗編――伝説と昔話』は、会津の磐梯町が編んだ町史の民俗編で、口承文芸の章の「伝説と昔話」の節にあたる部分である。磐梯山を七回り半巻いた大蛇の尾寺、弘法大師の梵字清水、井戸の精が嫁に来る赤枝の話などの伝説と、猿の嫁取り、山姥、笠地蔵、ノッペラボウの度胸ばなしなどの昔話を書きとめる。伝説と昔話の二つに分けて題を付して並べ、昔話は「むかしむかしあったどよ」と始まる土地の言葉の語り口を残す。