投げた三鈷を導いた梵字の雲
どんな伝承か
大同二年、磐梯山が荒れて人々を苦しめたため、都から弘法大師が下ってきたと伝えられる。大師は山を鎮めようと稲荷原に立って祈り、寺を建てるべき地を示してもらおうと、手にした三鈷を空へ投げ上げた。三鈷は雲の中へ吸い込まれて見えなくなった。大師があちこち尋ね歩き、今の梵字清水のあたりまで来たとき、梵字の形をした雲が北西へ流れていくのが目にとまった。その雲を追って行くと、いまの磐梯神社の裏、閼伽井のかたわらの藤の枝に、投げた三鈷が引っかかっていた。大師はその場所に寺を建てたのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
磐梯町史 民俗編――伝説と昔話(磐梯町(編)・磐梯町史)
『磐梯町史 民俗編――伝説と昔話』は、会津の磐梯町が編んだ町史の民俗編で、口承文芸の章の「伝説と昔話」の節にあたる部分である。磐梯山を七回り半巻いた大蛇の尾寺、弘法大師の梵字清水、井戸の精が嫁に来る赤枝の話などの伝説と、猿の嫁取り、山姥、笠地蔵、ノッペラボウの度胸ばなしなどの昔話を書きとめる。伝説と昔話の二つに分けて題を付して並べ、昔話は「むかしむかしあったどよ」と始まる土地の言葉の語り口を残す。