門松を見て正月を知った里
どんな伝承か
横須賀市秋谷の子安は、山あいの部落である。『新編相模風土記稿』には、里の人がこの地を正月知らずとも呼ぶとあり、その由来として、昔ここの住人が薪を売りに里へ下りたところ、どの家にも門松が立っているのを見て、はじめて正月が来ていたのだと知ったからだ、と記されている。この言い伝えはいまも子安に残っているという。長門の豊浦吉母や周防の室津のあたりにも正月知らずという名の場所があり、そちらでは、正月を二、三日過ぎてから門松を売りに来たので売れなかったからだ、というおろか村話になっている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話(中村亮雄(「伝説と昔話」)・神奈川県の歴史)
『神奈川県の歴史 県史講座要録――伝説と昔話』は、県史講座要録の県下の民俗篇に収められた、中村亮雄による講述「伝説と昔話」である。柳田国男の白米城伝説の研究を手がかりに、三浦半島の二反ヶ城、鶴見の見返し坂、湯河原の石橋山合戦の伝承など県内の伝説を取り上げ、藤沢・津久井・平塚などの昔話や笑話、世間話を紹介する。「はじめに」「伝説」「昔話」「あとがき」の四節からなり、昔話は本格昔話・派生昔話・笑話の別に沿って類話を並べる。