不動明王が力を授けた田沢の三十郎
どんな伝承か
田沢に三十郎という者がいた。背が低く力がなかったので、祖母が可哀そうに思い、大荒山の不動明王に二十一日の無言の願かけをしてくれたが、途中で病気になってしまった。三十郎がその後を引き継いだが、いよいよ満願の日、不動明王が「三十郎」と呼ぶと、無言の行を忘れて「はい」と返事をしてしまった。不動明王は気の毒に思い、三人力の半分にあたる一人力半の力を三十郎に与えたという。それからの三十郎は七十貫の石を持ち上げるほどの力持ちになり、江戸に出て力士になったとも、巡業に来た谷風を打ち負かしたとも伝わる。娘も力持ちに生まれたが、その子が生まれず大力の家系は途絶えたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
米沢市史 民俗編――伝説(米沢市(編)・米沢市史)
『米沢市史 民俗編――伝説』は、米沢市が編んだ市史の民俗編から、第八章「口承文芸」第三節「伝説」を収めたものである。狐・河童・蛇にまつわる話、上杉家の家臣や弘法大師・源義経にちなむ話、沢・池・岩の由来、地蔵や不動尊の霊験、温泉の開湯譚、長者屋敷など、米沢とその周辺に伝わる伝説を一話ずつ短くまとめて載せる。全体を「鳥獣・草木」「人霊」「山・川・湖沼」「地蔵・社寺」「温泉・町・村」の五項に分け、遠山と田沢の七不思議も列挙する。