兎に連れられ消えた二人の子
どんな伝承か
昭和の初め、滝山の五歳と七歳の子供が、水車小屋の年寄りへ弁当を届ける途中で姿を消した。道端に兎がたくさんいて、捕まえようと手を伸ばすたびに跳ねて逃げ、そのまま山奥へ連れ込まれたのだという。半鐘が鳴り、各戸から一人ずつ出す総人足で村じゅうを捜したが見つからない。数日後、口広沢の支流の太郎兵衛の沢で、水を見に来た女が痩せて髪の伸びた兄の方を見つけた。麦饅頭ばかり食べたと言い、腹を洗うと兎の糞が出てきた。弟は権左衛門の沢で岩に挟まったまま死んでいた。キツネが哀れんで兄だけ返したのだろうと人々は噂した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
脇野沢村史 民俗編――伝説と世間話・キツネ伝承(脇野沢村(編)・脇野沢村史)
『脇野沢村史 民俗編――伝説と世間話・キツネ伝承』は、下北半島の最西端にある脇野沢村の村史民俗編のうち、口承文芸を扱った第七章である。村で採集した一一七話の昔話の特色と語りの場・語り手、地名をめぐる伝説、人を化かすキツネや狐の嫁取り・仇討ちの世間話、夢の予兆をめぐる伝承、天候や豊漁・豊作の諺を収める。章を昔話、伝説と世間話、諺と言葉遊びの三節に分け、昔話には『日本昔話大成』の話型分類による対照表を付す。